自然エネルギー発電所めぐり(岩手編)
今回目指すのは北。東北新幹線から盛岡駅で乗り換えて、小岩井駅に到着。そこからはタクシーで長閑な風景を眺めつつ走ること15分程で目指す「(株)バイオマスパワーしずくいし」に到着しました。気づくのが遅れたがなんと目の前には岩手山が。
発電所があるのは、NHK朝の連続テレビ小説「どんと晴れ」のロケ地で有名となった雫石というところです。

雫石の風景
「(株)バイオマスパワーしずくいし」は雫石町にある小岩井農場の広大な敷地内にあります。
2004年に設立されてまだ日が浅い会社です。
昔から小岩井農場では、家畜糞尿を堆肥として利用されてきましたが、2004年に家畜排泄物法の完全施行によって家畜糞尿の適正処理が求められたことや、堆肥だけでなくエネルギーの有効利用としてのバイオマスの活用が注目され始めたことから小岩井農牧などの企業により、バイオマス資源の活用を目的として会社が設立されました。

バイオマスパワーしずくいし
「(株)バイオマスパワーしずくいし」では、小岩井農場内からの家畜排泄物と食物残渣の堆肥化事業等を行っています。
また、家畜排泄物と食物残渣を処理する過程で発酵したメタンガスを利用してバイオマス発電が行われています。発電施設は、国と県から補助を受け2006年8月より本格操業を開始。発電の燃料となる家畜糞尿は小岩井農場で発生したもの、また、食物残渣は雫石町内の学校給食等から発生したものや、県内の飲料工場から発生するコーヒーの粕も受け入れています。

バイオマス発電設備
それでは燃料から発電に至る過程を簡単に説明しましょう。
小岩井農場の広大な敷地内でのんびり過ごしている牛君たちが毎日排泄する糞尿はトラック等でこのバイオマスパワーしずくいしに運ばれてきます。それを液状化します。液状化している場所は、糞尿と食物残渣とコーヒー粕の3種類の香ばしい香りが漂っていて、コーヒー粕の香りのする場所から一歩も動く気になれませんでした。

小岩井農場の牛君たち
さて、その後その液状化された糞尿は、メタン発酵設備に投入されます。80℃程度で暖められ発酵により発生したガスは、白い丸い球状のガスホルダーというところに貯められます。貯まったガスは、発電に必要な燃料としてガスエンジンに投入され、自動車と同じ原理で火花点火によりエンジン内のピストンが動き、クランクシャフトを介して発電が行われます。

バイオマス燃料
発電した電気の半分は当施設内で利用され、残り半分の余剰電力は小岩井農場に売電されています。この施設内で利用されている電力量分を、当社がグリーン電力証書化し、企業や自治体等のお客さまにグリーン電力証書として発行しています。
一方、メタン発酵後に残る消化液は液肥として小岩井農場内で利用されています。まさに資源循環が図られ、自然と共生しているすばらしい施設です。

消化液から作られる堆肥
この発電施設は小岩井農場の見学コースの一部にもなっているそうですが、見学はバスの中からとなるため、香ばしい香りを堪能することができないのが残念です。
視察を終え、小岩井農場の牛君たちに別れの挨拶。有名な「一本桜」や「サイロ」を横目に「小岩井農場まきば園」に立ち寄りました。ここでは放し飼いにされている羊や牛、馬など動物たちと触れ合うことができ、森や牧草地の中を歩いて自然の息吹を直に感じることができる。そして、絞りたての牛乳から作るソフトクリーム。おいしい空気の中で食すソフトクリームはものすごく美味なので、立ち寄った方にはぜひお勧めしたい一品です。

小岩井農場まきば園